他人を変えることはできない。自分も所詮未熟者であり、人を教育し変えようなんてことは傲慢である。
組織では、マネジメントで人をどうにか変えようとする。しかし、“環境を整える”という視点をもつことが必要ではないだろうか。環境が整えば、人は勝手に動いていくのである。
そして、自分が働きたくないならなおさら、人を動かす必要があるが、ここでいう「自分がラクして人を動かす」には大前提がある。それは、“相手もラクにさせる“という視点を持つことである。ここが抜け落ちると、単なる丸投げや放棄でしかなくなるのだ。
私は、とにかく最小限の働きにとどめたい。働きたくないからムダが大嫌いである。そこで、自分が嫌なことだからこそ、相手にもしないようにと次のようなことを心掛けている。
最初の手間は惜しまない
自分が何もやりたくないからといって、「これ、やっておいて」と丸投げしてしまってはいないだろうか?自分がラクをするというのはそういうことではないかと勘違いしている人がいる。
しかし、これでは手戻りが増え、結果的に面倒なことになるのである。
そうならないためにも、少しでも働きたくないから最初に手間をかけるのである。
例えば、私は、デザイン制作のディレクションをすることがよくあるが、修正指示が分かりづらい、テキストベースで長々と戻ってくることがある。そういったときは、“絵で見せる”を意識して分かりやすくしてからデザイナーに指示を出すようにしている。
指示がきたものを、単にコピペしてデザイナーに渡せば、その瞬間はラクである。しかし、認識の齟齬やミスが起こるリスクが高くなる。
また、丸投げされたように感じるデザイナーが、イラッとしたり、やる気が失せてしまうような環境を作り出すと、あとで自分の負荷となって返ってくる。そうすると、その分働かなくてはいけなくなる。それも、嫌な思いをしながらである。
最初の手間は、実は手間ではないのである。
目的を明確に伝える
相手にスムーズに動いてもらうには、目的を明確に共有することである。何のためにやるのか?の認識がずれていたり、何も考えずに仕事を振ってしまうと、手戻りが増えたり、トラブルが発生する。コミュニケーションコストも大きくなる。目先の業務に追われていると、ついさばくことだけに目がいきがちで、目的を見失ってしまうこともよくある。目的は、ことあるごとに立ち返らせて相手を動かすこと、また自分も目的を見失わないようにすることが余計な面倒ごとを増やさないことにつながる。
相手が主体的に動く環境をつくる
相手が指示待ち人間になってしまえば、自分の負荷が増える。単に指示を出す手間だけでなく、「あいつは何もやってくれない」「使えないやつだ」といった精神的なストレスも増えるし、そういった思いは相手に伝わり、人間関係もぎくしゃくする。
では、相手が主体的に動く環境とはどんな環境だろうか?これはひとつではない。人の数だけあるのではないだろうか。
だからこそ、まずは相手をよく観察し、性格や価値観、力量をよく見極めることが重要である。それらの分析から、裁量をもたせて伸び伸び動いてもらうのか、サポートを手厚くしたほうがよいのかなど相手に合った接し方をしていく。
何も考えずに、自分のやり方を押し付けていくような接し方をしたり、誰にでも同じようにしか接し方しかしていないのであれば、自分に対してストレスを抱える相手が増える。その相手のストレスはいずれ自分に返ってくるのである。
手助けしてもらえるよう信用を築く
大変なときに周りからサポートしてもらうには、周りに敵をつくらないことである。味方になってもらおうとするとしんどいが、せめて敵にならないようにしておくのである。
では、どうやって敵をつくらないようにするのか。八方美人?ゴマすり?そんなことは必要ない。日頃の行動である。一生懸命さを見せていくしかない。丁寧な対応や約束を守るといった行動で、信用を築いていくのである。その土台があってこそ、忙しそうにしていたりすると、サポートしてくれるようになるのである。
まとめ
ラクしてできるかぎり働かないようにするには、相手にもプラスになることを提供し、自分も相手も快適に動けるようにしていく努力が必要なのである。