クライアントや上司からの依頼内容がふわっとしていて分かりづらいという経験をしたことのある人は多いだろう。何をしたいのかよくわからない、「任せる」のひとことで誤魔化され丸投げされたのに、成果物を出すと文句を言われる。そんなことに苛立ったことは幾度となくあるだろう。
私は、ただ単に指示どおりにやるべきことをやるという考えで仕事をしていたときは、指示をきちんと出せない相手が悪いと、相手ばかりを責めていた。だから、つねに何かあっても他人のせいであり、自分にも原因があると考えることができなかった。
しかし、制作系の仕事に携わるようになって、プロジェクトに関わる人たちを調整していかなければならないようになると、相手が悪いと文句を言っているだけでは、物ごとが止まってしまう状況に置かれた。それ以前は、新規獲得営業という仕事で、契約を取れば完了(後工程は別部署へ引き継ぐ)だったため、“納品”という概念がなかったのである。
制作の仕事には、常に“納品日”がつきまとってくる。限られた時間のなかで、しのごの言わずにやらなければならないのである。そうすると、いかに相手を動かしていくかという視点が必要になるのである。それを意識して行動したというより、タイトなスケジュールの中で必死に動かしているうちに、自然とそのように考えるようになっていた。考えなければやっていられない状況だったのだろう。
そのような経験をとおして、依頼をきちんと出せない相手だけが悪いのではなく、自分にも原因があったのではと思えるようになったのである。相手が動けるように、自分が工夫してみること。例えば、答えやすい形で質問をまとめるなど、相手を導いていく。そういう姿勢が大事なのである。
具体的な指示をもらって行動することは誰でもできる。というより、できなければならない当たり前のラインである。仕事は、完全な状態で依頼や指示がくることはない。それをどう補っていくか。自分の行動を工夫して補っていく。そのレベルを求められているのである。
相手に文句をいう前に、自分の行動を工夫してみよう。そして、その導きによって相手も工夫することに気づくようであれば、その相手との仕事はとてもスムーズなものになる。