仕事では好き嫌い関係なく、さまざまな人と付き合っていく必要がある。学生時代のように、気の合う仲間とだけ関わっているわけにはいかない。よくも悪くも、自分とはかけ離れたな価値観を持っている人とも向き合っていく。
そんな人間関係のなかでは、自分の価値観や主張をぶつけて人を動かそうとすると疲弊してしまう。受け入れる、受け流すといった術を身につけることがポイントになる。
私は、自己主張が強かった。真正面からストレートにぶつかる術しかなく、自分の考えが正しいと認めてもらい、自分に合わせて動いてもらうことばかりを考えていた。
芯が通っているといえば聞こえはいいが、前面にで過ぎると周りには迷惑である。ただの頑固者、融通が利かない人になってしまう。
しかし、メーカーで仕事をすることになったことをきっかけに、相手に合わせることの大切さに気づいたのである。
それまでも営業の経験があったが、流通業の商談の仕組みは、なんとも独特なものだった。同じ会社の社員の方、何百人とやりとりをするのだが、同じ会社に所属している人たちといってもまったく違ったルールを持っていた。
商談の設定や依頼の手続きなど、とくに不備があるわけでもなく進めていたのだが、同じように対応をしたにもかかわらず、喜んで感謝してくれる人もいれば怒りをぶつけてくる人もいたのである。
たとえば、メーカー側で、店舗と直接やりとりしてもらえることを喜ぶ人もいればNGを出す人、こまめに商談に伺うことを喜ぶ人もいればNGを出す人など、さまざまだった。
最初は、いきなり怒りをぶつけてくる方に対して、私もついカッとなってしまった。また、きちんとルールを決めてくれないと、こちらが動きにくいといったように、融通が利かない枠にはまった考え方しかできなかった。しかし、何度かそういったことが発生するうちに、いちいち反応していては、自分の身がもたないと考えるようになったのである。そして、ようやく捉え方を変えられたのだ。
お互いに、自分のやり方をぶつけていては、不満や怒りといった感情に振り回されるだけだと思った。そんなことに時間や労力を使うなら、相手が求めるものに合わせて動けば、相手に快適な状態をつくれて、自分にとっても快適になるのではないだろうかと。
そうして、〇〇会社の人とかルールといった枠を取り払って、相手と接するようにしてみた。Aさんは忙しいから積極的にサポートすると喜ぶ、Bさんは自分主体で動きたいから、あくまで最低限のフォローのほうが喜ぶといったように、相手に合わせて対応を変えていった。
すると、相手から「ありがとう」「いつも助かっている」と言ってもらえることが増えてきたのである。そんな言葉をもらえれば、もちろん嬉しい。そして、相手に合わせていても、自分のストレスがほとんどないのである。それよりも、楽しいとすら思えた。“自分を抑えて我慢“することとは違ったのである。
ひとつポイントは、仕事をいかにスムーズにして成果をだすのかといった視点を持ったことだと思う。そのために、自分のやり方や主張は、本当に必要なものかどうかである。そう考えたとき、自分のやり方や主張は邪魔なものだと判断したのだ。
相手に合わせるのは自分の意志がない、自分を犠牲にするというイメージを持っている人も多いのではないだろうか。たしかに、ポイントを間違えるとそうなりかねない。最初は、自分を抑え込んでいる感覚があるかもしれない。しかし、そういった経験を何度も重ねてできるようになるものである。相手に目を向けてみよう。