私は、ディレクターとして仕事をしている。ディレクターといっても業界によって少しずつ定義が違ったりするものだが、仕事をしていて思うのは、ようは「中間管理職」のような立場だということだ。関係者の言い分を聞く窓口となり、目的達成とともにどの関係者もいかに気持ちよく仕事ができるかを調整していく。進行状況の管理といった事務的な業務もあるが、大半は人間関係の調整をしているようなものだ。
人の悩みのすべては「人間関係」といわれるほど、人間関係によって人生は左右される。そんな厄介なところを担当するのがディレクターだが、世の中では営業やプロデュサーといった“企画”が持て囃されている。そして、当の本人たちも、その風潮もあってか、能力に伴わない高圧的な態度を取り、運営の現場を見下すような人も少なくない。
しかし、ここには大きな疑問を感じる。
もちろん、アイデアを出したりする仕事は“思考仕事”であり、重宝されるべきところがある。しかし、企画でやらなければならないことが甘すぎて、運営の現場に混乱の原因を作っているでのある。
私はこれまでに、多くのプロジェクトに関わってきたが、たいがい現場でさまざまなトラブルが起きるのは、企画が甘いからだと感じている。その分を現場がカバーして余計な負荷がかかっている。
〈企画が甘くなる原因〉
・知識不足である
・情報不足である
・リスク想定ができていない
・自分の願望・妄想が入る
予算の割り振りの考えかたとして、企画:制作:運営=5:3:2がある。「思考」の仕事が重宝されるというのはここからも読み取れる。しかし、企画が半分取るのは当然だと思えるような経験はほとんどない。逆に迷惑料として、現場にまわしてもらいたいと思うことのほうが多い。
そんな不満がある一方で、目の前で起こっている混乱をいかに鎮めていくかを考えざるを得ない状況では、リスク回避やトラブル時の突破力、いかに敵をつくらず仕事を進めるかといった術を身につけることができた。
・トラブル時こそ、全体を俯瞰し視野を広げてみる
・そもそもの目的は何なのか?を確認する
・強い責任感も大事だが、“なんとかなるさ“と気楽にも考える
・相手の自己重要感を高めながら接する
誤解のないよう付け加えておくと、企画をする人を避難しているわけではない。私は、企画が苦手である。だから、できる人には敬意を払っている。
現場の混乱の本当の原因を分かっていない、もっというと分かろうとしていないことが問題なのである。また、“仕事を(下請けに)出してやっている“という態度も改める必要がある。お金を払う側、受け取る側で上下関係になるのではなく、パートナーシップを組んでやっていくのが仕事ではないだろうか。
“根本”がしっかりしていないと元も子もない。企画はそこを担っているのである。