トラブルや困難にぶつかったとき、つい力が入りすぎてしまうことがある。強い気持ちを持って立ち向かわなければ!と真面目に考えればいいというものでもないのである。そう思うほどに事態が悪化することもあるのだ。
さまざまな試練を突破していく人を端からみていると、とても逞しく力強いエネルギーを感じるものだが、実はこういった人たちは「流れに身を任せる」という術を知っている。外からは見えないかもしれないが、「なんとかなるさ」と楽観的に考えている。
私は、物ごとを真剣に考えすぎる傾向が強かった。自分でいうのもなんだが、根はくそ真面目である。だから、試練を前にするとついつい力が入りすぎてしまう。また、そうしなければ突破することはできないという固定観念にも縛られていたと思う。小さいころからスポーツをやっていて、いまのように“水分補給”なんて言葉はなく、根性でどうにかしろという教えのなかで育ってきたのも影響しているかもしれない。
しかし、くそ真面目に困難に向き合っているにもかかわらず、なぜかさらに状況が悪化することがあった。どうにかしてやろう!しなければ!という気持ちが強くなるほど、視野が狭くなり思考も止まってしまっていたのだと思う。
営業の仕事をするようになると、ノルマを達成しているかどうかをチェックされるようになる。営業会議のたびに、数字の進捗や、未達に終わった理由などを上司から詰められる。そんな会議に備えて“現状の言い訳“を準備して臨むのだが、言い訳は通用するはずもなかった。「自分がコントロールできないことばかりに目を向けていて、コントロールできることをやっていない」とよく言われたものだ。
その経験をとおして、世の中にはコントロールできるものとできないものがあるという考え方をできるようになった。そして、自分がどうにかしようとしていることが、そもそもコントロールできないことが多いということに気づいたのである。
それが分かってくると、何でもかんでも力を入れればうまくいくのではなく、力を抜くことも大事なのだと思うようになった。そうして、困難があったときには、「なんとかなるさ」「流れに身を任せておこう」という感覚ももったうえで向き合えるようになった。そうすると、目の前のやるべきことを淡々とやっていると、不思議となんとかなっていくのである。
真面目さや責任感を持つことは大事なことである。しかし、その姿勢が仇になることもある。私たちは、すべてをコントロールできるわけではない。流れに身を任せてみるのも大事なことである。